Lección 006 be動詞に相当する動詞の使い分け【1】

まず、serとestarそれぞれの語源に軽くふれます。両者のルーツを知ると、使い分けの根拠が見えてくるだけでなく、記憶の一助にもなりますよ。

ラテン語との関わり
スペイン語はラテン語を主なご先祖さまとし、その面影を強く宿す言語です。21世紀の若者たちが話す現代スペイン語に、はるかローマ時代のラテン語が色濃く残っているなんて、なんとも不思議な感じがしますね。ただよく考えてみると、動植物の新種に与えられる名前は今なおラテン語ですし、この”死語”はしっかりちゃっかり生き残っているようです。

ちなみに、英語もラテン語に由来する言語のひとつですが、歴史上ゲルマン系言語の影響を強く受けているので、スペイン語ほどラテン語チックではありません。それでもあちこちにラテン語の名残があり、それゆえにスペイン語と通ずる部分もたくさん見られます。英語とスペイン語の類似点に注目し、すでに知っていること(英語)と新しく学んだこと(スペイン語)とをひもづけていきましょう。効率的な学習のコツですよ。

serのルーツ
serはラテン語esseに由来する言葉です。esseはラテン語動詞sumの不定形で、sumには「存在する・〜である」といった意味があります。
このラテン語esseの遺伝子を受け継ぐ語として、例えば英語名詞essenceがあげられます。形からして明らかに関係があるとわかりますね。essenceの意味はご存じだと思います。「本質・真髄」ですね。ラテン語esseの持つ「(本質的に)〜である」という意味がしっかり反映されているのがわかります。この点はスペイン語動詞serにも強く受け継がれています。

estarのルーツ
estarはラテン語stāreに由来する言葉です。stāreはラテン語動詞stōの不定形で、stōには「立つ・居る・滞在する」といった意味があります。
このラテン語stāreの遺伝子を受け継ぐ語として、例えば英語名詞statusがあげられます。形からしてstāreに由来するのがわかりますね。statusの意味はご存じだと思います。「地位・状態」ですね。ラテン語stāreの意味に通ずるものを感じます。同じルーツを持つスペイン語動詞estarが「状態・所在」を表すのも道理だと言えるでしょう。

ルーツが暗示する使い分け方のヒント
語源を知ると、serもestarもbe動詞的な意味を持つとはいえ、それぞれがカバーする範囲に違いがあるとわかってきますね。簡単にまとめれば以下のとおりです。

ser ➡︎主語の本質に関わる性質(これを日本語では属性とも言う)について述べるときに用いる。
estar ➡︎①主語の本質には関わらない性質②主語の状態③主語の所在について述べるときに用いる。

「性質」の部分でかぶっているように見えますが、その性質が本質的であるかないか、そこではっきりと線引きされています。「本質的」という言葉を「(半)永続的」と言い換えればよりわかりやすいでしょうか。例えば前々項でふれたとおり、国籍はserで表します。絶対不変の永続性を持つとは言えないものの、今日と明日とでころころ変わったりはしない要素だからです。考えてみれば、国籍はパスポートなどの身分証明書に必ず記載される事項です。本人を識別するのに欠かせない点、本質的な要素、属性だからですね。serであらわされるのも納得です。

では、次項以降でserとestarの使い分けについてまとめていきましょう。