前項で、serだけではbe動詞の意味を網羅できない、というよりもほんの一部の意味しか表せない、とお伝えしました。もうひとつの動詞estarがいかに重要かわかるでしょう。estarは主語の属性・性質はもちろん、状態や所在を表すこともできる、マルチな動詞なのです。
まずは活用してみましょう。
主格 | estar |
---|---|
yo | estoy |
tú | estás |
él | está |
nosotros | estamos |
vosotros | estáis |
ellos | están |
estarもやはり不規則活用動詞ですが、serの変身ぶりと比べれば大いに原形を留めていておとなしめです。1人称単数形(estoy)以外の部分は(形に限って言うならば)ar動詞の規則活用にのっとた変化をしています。
ただし、1人称複数形(estamos)と2人称複数形(estáis)を除き、規則活用動詞とは異なり、最後の音節にアクセントが置かれます。そのほうがより自然なイントネーションになるので発話時には間違いが起きにくいのですが、問題は記述時です。1人称単複形以外にはしっかりアクセント符号をつけましょう。慣れてきても忘れがちな点です。
さてここで、ひとり仲間外れになっている1人称単数形に注目です。【oy】で終わっていますね。どこかで見た覚えはありませんか。そうです、前項で扱ったserの1人称単数形、soyです。同じく【oy】で終わっていました。脳内ブックマークをしていただいた点です。
実は、不規則活用動詞の多くはこのようなパターン的変化をします。今回取り上げた、1人称単数形が【oy】で終わるパターンは短めの動詞に多くみられる傾向があります。serやestarのほかには、dar(英語のgiveに相当)やir(英語のgoに相当)などが代表的でしょう。最初に「アウトロー的な動詞でさえやはり一種のパターンに沿って変化するものが大多数」ですとお伝えしましたが、それはこうした理由からです。
不規則活用動詞のパターンについては今後もできる限り取り上げていきます。パターンが見えてくると、アルファベットの羅列に近かった活用表が突然意味を持ち始めます。いわゆる『すっきり体験』ですね。ご期待ください。
ではestarを使ってみましょう。一例として、次のような表現ができます。
Yo estoy nervioso.(I am nervous.)
Tú no estás contento.(You aren’t happy.)
¿Él está calmado?(Is he calm?)
気分に関することはestarで表すのですね。1つめのフレーズは、スペイン語での会話にあまり自信がない時などに前振りとして使える、いわゆるつかみの一言です。なお、主語(yoつまりI)が女性の場合はnerviosoがnerviosaとなります。2つめのcontento、3つめのcalmadoも同様で、主語が女性の場合はそれぞれcontenta、calmadaとなります。スペイン語独特のルール、性(数)一致にのっとった変化ですね。
ここまででserとestarの概要をお伝えしました。次項以降ではこれら2つの使い分けを明確にしていきます。すっきり整理できると気持ちがいいですよ。